神社の御殿

0
2

 稀比都神社は延喜式神名帳逸文にもその名のある格式高い神社だ。
 創建は昌泰二(八九九)年というから、今から一一〇〇年以上前に造られたことになる。
 そんな歴史のある稀比都神社には、鳥居が二つある。
 その内、一番外側にある「一の鳥居」と呼ばれるとてつもなく大きな鳥居の近くを夜中に通った際に鳥居越しに神社を見ると、昼間とは違う光景が見えることがある。
 普段は稀比都神社の二の鳥居や社殿などが見えるのだが、夜中には、そこに巨大な御殿が見えるのだ。
 御殿は金銀珊瑚で飾り立てられて、キラキラと輝いている。その大きさは雲突くほどのもので、鳥居越しに頑張って上を見ても、その天辺がどうしても確認できないのである。
 御殿の方からは穏やかな笑い声や管弦の音色が聞こえ、常に楽しそうな雰囲気に包まれているのだが、この御殿の姿を見た者は、三日以内に風邪を引いてしまうと言われている。
ファンタジー
公開:21/01/25 07:41
稀比都市サーガ

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容