ペガサス

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 会社に遅刻しそうになったので、ペガサスの停留場へと向かった。
 まだ数頭のペガサスがいたので、その中の一頭に跨った。
 会社名を耳打ちすると、ペガサスは空高く急上昇する。
 私は必死にペガサスに取り付けられている命綱を持って踏ん張っていた。
 シートベルトくらいないと、いつか誰か死んでしまうのではないかと思っていると、急にペガサスが右に急旋回した。その衝撃で私は思わず命綱を離してしまい、ついでにペガサスからも落ちてしまった。
 ああ、死ぬのか。
 割と淡白にそう思った途端、フゥワリとした感触に身体が包まれた。見れば、先ほどのペガサスの背中が私の身体を受け止めていたのだ。
 ペガサスは何とも申し訳なさそうに嘶くと、それからは少しスピードを落として、無事に私を会社まで時間内に送り届けてくれた。
 ペガサスの値段が張るのは、死人を出さないという能力も込みだからかと、料金を払いながら思った。
公開:21/01/24 20:59
稀比都市サーガ

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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