シェアハウス

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「貧乏神はよ、人を貧乏にするのが仕事って話だ。」
ろれつの回らない口で男は語る。
「だから、俺にゃ貧乏神が取り憑いてるに違いねぇ。だって働いても働いても金なんかたまんねぇんだもん。」
「稼いだ分、ここに来て飲んでりゃ、貯まるもんも貯まらねぇさ!それより貧乏神が憑いてるってんならこの店の方だろうがよ。こんだけ俺たちがせっせと金を落としていってんのに、いつ来てもさびれてら。」
口の悪い客に、店主はガハハと笑って言い返す。
「こんなはした金でこんだけ飲ませてたら、身上も潰れるってもんだぜ!」
「ちげぇねえ!」
客も一緒になって笑い転げる。
「ひどい言われようじゃないか。」
「いいさいいさ。言わせておけば。」
この店でシェアハウスしている福の神と貧乏神は、お供えの塩を一なめしながら御神酒をグビッとうまそうに喉へ流し込むと、目を細めて神棚からそんな店内の様子を眺めていた。
その他
公開:21/01/24 19:49

仁科佐和子( 愛知県 )

児童文学、エッセイ、小説などを書き散らかし、公募にいそしんでおります。

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