月と兎の夢

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 こんな夢を見ました。
 私たちは月面でお茶会をしています。
 月には兎たちがたくさんいるのかと思ったのですが、そんなことはありませんでした。周りはクレーターだらけで、動物が住めるような環境ではないのです。
 そんな荒涼とした風景の中、私と薫はのんびりと紅茶を飲んでいます。
「時には物寂しい風景を楽しむのもありだね」
 薫はもう何杯目とも知れぬ紅茶を飲み干してから満足げに言いました。
 私は適当に相槌を打ちながら、時折、近くのクレーターの方へソッと視線を走らせます。
 先ほどから、何かがクレーターの中からヒョッコリと顔を出すのです。細長い耳が生えているので兎のようにも思えるのですが、ニタリと笑ったその顔は、どうも人のようにも思えます。
 もしかすると月から兎がいなくなったことと、あの存在は何か関係があるのかも知れないなと、ふと思いました。
 単なる気のせいなのかも知れませんが。
ファンタジー
公開:21/01/25 21:11
夢中探検隊

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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