コイツらの正体は……

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「まさか殺されるとは思わなかった」
ついさっき“再会”した友が他人事のように言った。
「いつもの如く日向ぼっこをしようとしてさ、ちょうど良い場所があったから、すぐに確保したんだ」
「どんな場所?」
「だだっ広くて木の香りが強い」
「そいつは良い。ここ最近では滅多にお目にかかれん」
さも満足げに頷く友は、さらに続ける。
「にしても驚いた。夢現の中で突然の悲鳴でな」
私の時もそうだった。
「何事かと目を開いた途端、脳天一撃。即死だった」
毒ガスを浴びせられた私よりはマシだろうか。
「殺されたことには怒りが収まらねえ。俺たちが何をしたってんだ。ただ普通に生きていたのに。それを、ひと目見て悲鳴をあげて……」
友の涙を、この時初めて見た。
「ただ、先に逝っちまったお前と会えただけ、良しとするか」
「それを聞いて安心した。このまま成仏して、また同じ姿で再会しようや」

「いや、カメムシはもう懲りた」
ファンタジー
公開:21/01/25 18:43

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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