茶柱の塔

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 私の友人に、茶柱で塔を建てることに人生を懸けている人間がいる。
 一応デザイナーを仕事にしているのだが、現在はそちらが副業になっており、茶柱で塔を建てるほうが本業になりつつある。
 彼女が茶柱に魅せられたのは、ちょうど二年前の春。
 私や他の友人四名で回らない寿司屋に行った時に、初めて湯飲み茶碗の中で茶柱が立っている姿を目撃して、感動したのである。
 それ以来、彼女は茶柱を立てることに異様な執念を燃やすにようになり、私が気付いた時には立てた茶柱で自宅の裏庭に巨大な塔を建て始めていたのだった。
 彼女曰く、茶柱で建てられた塔こそ、全ての建築物の中で最も美しい物なのだそうだ。
 現在、彼女が建てている茶柱の塔は高さが五〇〇mほどになっており、見物人がひっきりなしに来て大変であるらしい。
 彼女曰く、大気圏辺りまでは行きたいとのことだったので、まだまだ塔の完成には時間がかかりそうだ。
ファンタジー
公開:21/01/23 22:38
稀比都市サーガ

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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