九尾の狐

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奈良時代、九尾の狐がシルクロードから日本に渡ってきた。
九尾の狐は、美女に変化し、中国や朝鮮、ベトナムの皇帝の妃となって、裏で政治を支配してきた恐ろしい妖怪だ。
藤原不比等の娘で、聖武天皇の妻であった光明皇后に、九尾の狐が取り憑いた。病弱だった聖武天皇が亡くなると、光明皇太后が政治の実権を握り、不比等の孫である藤原仲麻呂が政務を独占した結果、政治腐敗を招いた。これを九尾の狐による策謀であると気づいたのが吉備真備だ。
真備は、遣唐使として中国に渡り、皇帝の玄宗に仕えていたが、玄宗が絶世の美女と言われた楊貴妃を寵愛したことで政治が乱れた。これが九尾の狐の仕業であると、真備は伝え聞いていたのだ。
光明皇太后が亡くなると、取り憑いていた九尾の狐が離れたすきに、真備は、藤原仲麻呂を討ち、九尾の狐も日本から追放した。
学者から大臣まで異例の出世を成し遂げた真備は、八十一歳の生涯を政治の安定に尽くした。
その他
公開:21/01/23 20:08
奈良時代 シルクロード 藤原不比等 聖武天皇 光明皇后 藤原仲麻呂 吉備真備 遣唐使 玄宗 楊貴妃

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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