20年間の夢

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「事故に会うときはスローモーションに見える」ってホントなんだ。
バイクを運転するぼくは、右折してくるトラックをよけきれずに、その下じきになってしまった。
体から、生あたたかいものどろりと流れる。
人の体って、こんなにたくさんの血液で満たされているんだ。
ああ……、ぼくは死ぬんだ。25年間の人生が、ここで終わるんだ。
そう思った瞬間、視界が暗転し、ぼくは意識を失った。

目を開けると、最初に飛びこんで来たのは天井の木目だ。
遠い昔、どこかで見たことがあるような気がする。
そしてこの布団の匂い。なぜかなつかしい気持ちになる。
「ケンタ、そろそろおきなさーい」
ドアの向こうから、女の人の声がする。
これは……、ぼくの母の声だ。
布団から起き上がり、ドアを開けようとした
ドアを開けると、そこには若かりし頃の母が立っていた。
「おはよう。今日はケンタの5歳の誕生日ね。おめでとう」
SF
公開:21/01/23 19:16

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