焼き尽くされたもの

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教会の扉には外から木板が打ち付けられた。
人々は叫び声を上げたが、外の兵士たちはからかいの言葉を投げつけるだけだった。
「お前たちの神が助けてくれるだろ」

雄叫びと、嘲笑。残された気力で入り口を叩き続けていた老爺と女達が一斉に後ろへと引き下がる。扉の下から、禍々しい灰色の煙が立ち上ってくる。

窓ガラスの割れる音がし、投げ込まれた松明が子供を抱く母親のもとへ向かっていく。
「きゃああ!」

母の絶叫を皮切りに、兵士たちの声が途絶えた。間もなくして教会に閉じ込められた人々も言葉を失った。松明は空中に静止し、その上には有翼の人ならざるものが顕現していた。

人々は跪き、目を閉じて手を合わせた。


黒焦げになった死体の山を見ながら、兵士の一人は奇妙なことに気がついた。女子供、老人しか居なかったはずなのに、死体はやけに大きく、逞しかったのだ。

覗き見た顔はどこか、自らのそれに似ていた。
その他
公開:21/01/25 07:00
更新:21/01/24 15:10

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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