憧れた勇者は

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絵本や、ゲームの中の主人公。その、勇者に憧れた。
どんな強大な敵でも、決して挫けることはなく。強い絆に結ばれた仲間と共に、世界を救うのだ。現実問題として、そんなものは叶うことはなく、それはただの夢想に過ぎない。
けれど、叶わないと知っているからこそ、時たま、自分で想像したその世界へ現実逃避をする。
豊かな世界。その世界を脅かす巨悪を倒す、勇者になって。

そう、それは、ただの憧れで良かった。
良かったんだ。

「神託が降りました。貴方が、勇者なのです」
目の前に現れた、ゲームのキャラクターのような服を着た女性がそう言った。でも、そんなことより、街に。世界に目が奪われた。
炎。煙。叫び声。泣き声
絵本やゲームでしか見たことない世界が、広がっていて。
「私達と共に、悪の魔王を倒す旅をしてください」
それは、ただの憧れだった。


…現実に、世界がこんなことになるのを、望んだ訳じゃ無かったんだ。
ファンタジー
公開:21/01/24 12:32

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