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女は宝石じゃなくていい。
ささくれ立った原石のまま、針のように尖らせた脆い石をそのままに生きろ。
他人に見せるためにカットし、磨く必要などない。あなたの胸の奥で輝けばいい。
その光だけが、あなたを導く。

僕は感心してホームの壁に貼られたその巨大な化粧品広告を眺めていた。
いつの間にかトイレから戻ってきた彼女にいきなり肩を叩かれ、びくんと体が震えた。
「そんなに驚かなくたっていいでしょ」
「いや、ちょっと集中してたからさ」

彼女は腰に手を当ててその駅広告をじいっと見つめた。
「こーゆーのが好きなわけ? 控えめなナチュラルメイク?」
「うーん、そういうわけでもないんだけどさ」
彼女の一重は今日も二重だ。正直僕はどっちでもいいのだけど。

「綺麗な人だけ、ナチュっていいのは」
行こ、と言って黙っている僕の手を引く。

伝えるべき言葉を、まだ言えない。
僕も、もっとナチュらなきゃ駄目みたいだ。
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公開:21/01/24 13:00
更新:21/01/24 12:17

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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