元も子もない。

0
1

「必ず、捕らえよ。情報を聞き出すために、絶対に生きて捕らえるように」

 とある国の独裁者は命令を下した。外国のスパイを捕まえるべく、強い指示を出したのだ。



 とある国では、独裁の意向が何よりも優先される。まずは直接指示を受けた官僚たちが黙々と動き、さらに下に指示を出す。



 その結果、スパイは捕まったが、死んでしまった。無理やり強引に進めすぎたため、殺してしまったのだ。



 ──忖度が下へ下へと流れるうち「必ず捕らえよ」の命令だけが独り歩きし、必定となってしまっていたのが原因。死んでしまってはどうしようもない。情報は入らぬままだ。



 直接指示を出した官僚に感情をぶつけようにも、またその怒りが下請けから下請けへと流れていった結果、どうなるかもわからない。そう考えると独裁者は怒り狂うこともできないのだった。
ホラー
公開:21/01/24 02:12
忖度 大統領 独裁者 政治

comsick( 京都 )

星新一が大好きな、ディレクター&ライター。仕事では主に経済を扱っていますが、創作では色々挑戦してみたいなって、思ってます。

※メインの媒体は「カクヨム」です。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880314308

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容