少年と蟹座
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枯れたツタが幾重にも絡まりまもなく朽ちるだろう商店が旧街道には遺されていて、右に少し傾き地面に沈むようなその姿は、網にかかった巨大な蟹がそのまま色褪せてミイラになったような時の封印を感じる。
私によく似た少年が猫一匹通らぬ道に円を描いてはケンケンパで往き過ぎる。
蟹の背には銅板を刻んだ関口燃料店の看板文字。戦後、祖父が薪や炭の販売からはじめたこの店はその後灯油やプロパンガスの配達をしていたが、父は後を継ぐことなくこの家を出て家庭を持ち、今はその父も死んだ。後継ぎを失った祖父母はある日、手付かずの朝食をそのままに姿を消した。父は祖父母の帰りを祈りこの家を遺していたがそれももう必要ないだろう。
廃線の駅舎で父によく似た男がランタンに物語を記しては宵空に放っている。蟹みたいな燃料店や少年の私。流星ケンケンパ。
この集落のすべては地上絵で、揺れ輝き燃え尽きる父の視線を私は空に感じている。
私によく似た少年が猫一匹通らぬ道に円を描いてはケンケンパで往き過ぎる。
蟹の背には銅板を刻んだ関口燃料店の看板文字。戦後、祖父が薪や炭の販売からはじめたこの店はその後灯油やプロパンガスの配達をしていたが、父は後を継ぐことなくこの家を出て家庭を持ち、今はその父も死んだ。後継ぎを失った祖父母はある日、手付かずの朝食をそのままに姿を消した。父は祖父母の帰りを祈りこの家を遺していたがそれももう必要ないだろう。
廃線の駅舎で父によく似た男がランタンに物語を記しては宵空に放っている。蟹みたいな燃料店や少年の私。流星ケンケンパ。
この集落のすべては地上絵で、揺れ輝き燃え尽きる父の視線を私は空に感じている。
公開:21/01/22 10:20
更新:22/04/18 10:15
更新:22/04/18 10:15
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