剽窃教授

「剽窃すべし」は教授の持論。先行研究の引用と剽窃は紙一重どころか表裏一体、同一行為。研究者は自覚的積極的に剽窃すべきと教授はのたまう。剽窃上等、剽窃のススメ。教えに従い我ら教え子は実験と論文にいそしむ。実験とは発表済み事例を追認する剽窃行為。そして論文は引用に次ぐ引用、剽窃の塊であるべき。先行研究を読破編集することこそ研究者の仕事。わずかのオリジナリティも夢想してはいけない。
学内で随一の実力教授だがかつては同僚先輩学者から非難されたらしい。しかし教授は彼らの研究論文の剽窃事実を明らかにし、彼らの剽窃研究をさらに緻密に編集剽窃して新たな研究成果を打ち立てた。今では教授に反論する者はいない。教え子たちは学界で圧倒的なメジャー勢力である。
我らはせっせと剽窃に努める。特に教授の論文は剽窃のしがいがある。しかし我らの剽窃論文を、教授はさらに剽窃して新たな研究成果の山を築く。見事な剽窃返しである。