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泣き声がする。
「珍しいわね」
「俺が見てくるよ」
子供部屋へ行くと、兄のタクが悲しそうな声で呻くように泣いていた。
「どうした?」
身体を起こし、とんとんと背中を叩いてやる。声はすぐに小さくなり、ぐずぐずと鼻水を啜る音だけが畳の部屋にしんみりと響く。
言葉を待つ。タクはまだじっと黙ったまま、俺の服をゆるく掴んでいる。
「怖い夢でも見たのか?」
タクは首を振った。
「眠れないの」
「うん」
「はやく、寝ないと、明日、旅行に連れてってもらえなくなっちゃうから……」
そう言ってまた泣きそうになるので、なんだそんなことかあと可愛く思ったがそういえば自分も昔同じような夜のあった気がする。
「大丈夫だよ、横になってるだけで体は休まるから、朝になったら元気に起きられるさ」
昔父に言われたことを、息子に伝える。

タクの髪を撫でながら、自分は父親になったのだと、そんな当たり前のことを俺は考えていた。
その他
公開:21/01/22 23:45
更新:21/01/22 23:34

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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