豆まき

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「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ! ーー鬼は外ー!」
恵太は落花生を庭に投げつけた。ぽつぽつと雪に豆が埋まり見えなくなった。
「・・・・・・けいちゃん、そのやり方ちょっと卑怯じゃない?」
「ママも投げて!」
恵太に促されて母の才加が「福は内!」と遠慮がちに撒いた。どうしても、片付けの事を考えてしまう。春になったら出てくるだろう。
「寒いよ、部屋に戻って甘酒飲もう」
才加が酒粕とキビ糖で甘酒を作る横で、恵太は落花生から豆を取り出している。
「どうするの?」
「雑誌に載ってたお菓子を作る」
フライパンで豆を炒り、キビ糖をからめて出来上がりだ。甘酒と豆の香ばしい香りが部屋に広がった。
「こんな豆だったら、鬼も好きかもね。あちち」
「気を付けてね。そうね、食べるかしら?」
その時、ドスンドスンと屋根の雪が落ちた音がした。
「鬼だったりしてね」
恵太は楽しげに口に豆を放り込んだ。
ファンタジー
公開:21/01/22 23:03
雪国の豆まき 落花生

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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