庭町の古本屋さん

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庭町の郵便ポストに夕陽が差すと、古本屋さんの入り口になる。ポストの端を指でつまむと、景色がペロッとめくれて店に入れる。中はどこを向いてもびっしり本で、どっちが床でどっちが天井か忘れてしまう。
店の奥では店長の錆び猫が黙々と本繕いをしていて、たまにケホッと毛玉を吐く。色とりどりのふわふわ毛玉。私は店内に散らばった毛玉をたどって、ピカピカに繕い立ての本を見つけるのが大好きだ。
今日は水色の毛玉を拾おう。悲しい涙のお話か、澄んだ空のお話か。そんな風に拾った毛玉がついに3万個になると、突然、集めた毛玉がぐしゃっと混ざって黒い雷雲になってしまった。
ゴロゴロ……ニ˝ャーーン˝!!
轟音が響いて、私は一筋の閃きに打たれた。

気がついて窓を見ると、アフロヘアーの私が映っていた。さっきの雷雲そっくりなアフロ。
──そうだ、虹色アフロの女の子の話を書こう。
私の中に、今はまだ私だけの新しい物語が生まれた。
ファンタジー
公開:21/01/22 17:18
SSG30000作記念 ランダムキーワード 古本屋で探すのが楽しい毛玉 下戸仙人日記

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