緋鯉の振袖
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いつもは通り過ぎてばかりの古着屋の前で足を止めたのは、ショーケースの中に紅の振袖が飾られていたからだった。
いや、それだけだったら別に綺麗だなと思いながらも足を止めはしなかった。
でもあの時は、振袖の中を綺麗な緋鯉が悠々と泳いでいたのだ。
緋鯉が泳ぐこんなお洒落な振袖があるのかと私は驚いてしまい、話を聞こうと店の中に入った。
店番をしていたのは、私とそれほど年の変わらぬ女性で、ショーケースの中の振袖が見たいと言うと、すぐに持って来てくれた。
けれど、見せられた振袖の中にはあの緋鯉は見当たらなかった。
その話をすると、女性は合点が行ったように頷き、静かに店のとある壁を指さした。
見れば、壁の中をさきほどの緋鯉が悠々と泳いでいるではないか。
「あれは私のペットなんです。悪い子で、時々、売り物の中をお散歩しちゃうんですよ」
女性は申し訳なさげに微笑んだ。
いや、それだけだったら別に綺麗だなと思いながらも足を止めはしなかった。
でもあの時は、振袖の中を綺麗な緋鯉が悠々と泳いでいたのだ。
緋鯉が泳ぐこんなお洒落な振袖があるのかと私は驚いてしまい、話を聞こうと店の中に入った。
店番をしていたのは、私とそれほど年の変わらぬ女性で、ショーケースの中の振袖が見たいと言うと、すぐに持って来てくれた。
けれど、見せられた振袖の中にはあの緋鯉は見当たらなかった。
その話をすると、女性は合点が行ったように頷き、静かに店のとある壁を指さした。
見れば、壁の中をさきほどの緋鯉が悠々と泳いでいるではないか。
「あれは私のペットなんです。悪い子で、時々、売り物の中をお散歩しちゃうんですよ」
女性は申し訳なさげに微笑んだ。
ファンタジー
公開:21/01/21 07:51
稀比都市サーガ
幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。
アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。
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