大村君の寝言

2
2

 一緒に暮らしている大村君は、夜に寝言を言うことがあり、横で寝ている私にはハッキリと聞こえている。
 しかも、それはただの寝言ではなく、プチ予言的なものである場合が多い。
 例えば「明日はキャベツを早く買って」という寝言が出たとする。
 やや謎めいているのだけれど、次の日の夕方にスーパーへ大村君と一緒に行くと、キャベツがその日に限って売り切れになっているのだ。
 そこで「明日はキャベツがすぐ売り切れるから早く買って」ということだったのかと私だけ合点が行くのだった。
 大村君の寝言は月に一回あるかないかだ。ただ、その予言は必ず当たる。
 内容はそれほど大袈裟なものではないのだけれど、生活する上で重要な予言である場合が多い。だから、私は密かに大村君の予言を頼りにしている。
 もっとも、当の本人には記憶がないらしく、感謝してもキョトンとされるので、張り合いがないのだけれど。
ファンタジー
公開:21/01/21 07:50
稀比都市サーガ

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容