大吉池

0
2

 大吉池というものが家の近くにある。
 なぜ大吉池という名前が付いているのかは知らない。
 元々は違う名前が付いていたという話もあるのだが、現在ではその名前は残っていない。
 この池は、毎日微妙にその形を変える。
 ある日は菱形、またある時には円形、といった具合で、形が一定しないのだ。
 もっと言うなら、池のある場所も毎日変化する。
 東西南北あちらこちらをチョロチョロと移動するのだ。
 一体どうやって動いているのかが気になって、私は以前、夜に懐中電灯を持って大吉池に行ったことがある。
 確か今日はこの辺りにあったよなぁと思う場所を懐中電灯で照らすと、ちょうど池が動いているところだった。
 池の下にはモフモフの動物のような足が何本も生えていて、それがヨチヨチと歩いて池全体を動かしているのだった。
 だから、大吉池は池ではなく、池の形をした動物なのかも知れないなと、あれ以来思っている。
ファンタジー
公開:21/01/21 07:49
稀比都市サーガ

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容