魔法使い見習いの誤算

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「飛べ」
呪文と共に杖を振っても、目の前の羽はピクリともしない。
どうしよう。首を冷たい汗が流れる。
少し前の自分が疎ましい。床に物を置く癖が仇となり、魔法の杖を踏みつけてしまったのだ。真っ二つになった。テープで修復しても効果なし。杖は今や棒きれ。
学校のことが頭をよぎる。明日は実習、もし上手くいかなければ。
最悪の事態を想像し、身震いする。
「と、とりあえず落ち着こう」
お菓子を食べようそうしよう。しかし動揺を抑えきれず、箱からお菓子がこぼれる。
「おっと」

拾い上げた瞬間。

床の荷物全てがふわりと浮かびあがる。まるで魔法が起きたように。
恐る恐るもう一度それを振ってみる。荷物は勢いよく天井にぶつかり、落ちた。
「…」
ゆっくり視線を手元に移す。握っているのは杖じゃない。香ばしいプレッツェルにチョコがコーティングされたお菓子だ。

俺が今後魔法を使うには、ポッキーが必要らしい。
ファンタジー
公開:21/01/21 22:26

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