蜃気楼

その蜃気楼をくぐったものは、奇妙なできごとにあうという。

ある大学生の写真サークルグループは撮影会の帰り道、車を走らせていたら、カーナビが壊れたのか道に迷ってしまった。
この炎天下の中、内臓されているコンピューターがいかれてしまったようだ。
悩んでいるとそこに、ゆらゆらとゆらめき、遠くの街を映した何かがあった。
みんなは「街が見えた！」と喜んで、さらに車を走らせた。

ゆらめくカーテンをくぐったその直後、足元から大きくガサガサ、ガサガサと音がする。
後頭座席に乗っていた女が後ろを振り向くと、そこには大きく、長く、そしてするどい針をもつ尻尾が。
運転席の男が足もとを見ると、大きな目玉がぎょろりと睨んでいた。
恐怖におののいた一同はそのするどい尻尾の生き物から飛び降りて逃げ出した。
その場には、乗り捨てられた車だけが残っていた。

その蜃気楼をくぐったものは、ありもしない幻覚をみるという。