病弱なソーダ水

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ソーダ水を眺める。
ピンク色の液体に小さな透明な泡が現れては消え、湧いては弾ける様はまるで生きているようだ。
彼と来た時もよくこの店であの話この話の想い出が湧いては消える。
そして彼が突然救急車で運ばれた日。
あの時もソーダ水が目の前にあった。
彼はその後もこの店に通う事を望んだ。そしていつものように私にソーダ水を注文するように頼んだ。
それからソーダ水には病弱な彼の顔が映るようになった。
マスターがそれまで青だったソーダ水の色をピンクにしてくれたのはそれから間もなくの事だった。
半年後、彼はピンクの液体の向こうから永遠のさようならを言った。
覚悟はできていたが涙が止まらなかった。
彼はこれ以上にない笑顔で私の頭を抱いてくれた。
それ以来、ソーダ水を注文することはなかった。
3回忌を迎えた今日、彼が夢に出てきて言った。
「ソーダ水、飲もうよ」
弾ける泡は一つ一つが彼の笑顔だった。
その他
公開:21/01/26 09:00

フミさん

時間がある時に書き散らしたものを備忘録的に上げています。
乱文にも拘らずコメントをいただいた方々ありがとうございます。
たまにしかアクセスしないので、コメントを読めない事が多々ありますので予めご了承ください。

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