ワイヤレスドーナツ

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僕と彼女の杏は『ドーナツフェスティバル』というイベントに来ていた。杏の父が開発担当として働く会社が主催だ。
杏が買ってきたドーナツを二人で頬張る。僕の肩に頭を乗せて甘えてくる杏が愛おしくて仕方ない離れたくない二人だけの世界に行きたい。頭の中は杏だらけ。
が、ジュースを買いに杏が席を離れた時だ。ベンチの隣に知らない女の子が座った。何故だか無性に惹きつけられた。話しかけてみたい、でも……。悩んでいたら杏が戻ってきた。全てを見透かされたようで「ご、ごめん」と思わず謝る。
「電波障害が起きていると思ったら他の女の子が近づいたせいね。パパにデバッグしてもらわないと……複数繋がって浮気してしまうこともあるのね」
「え?」
「これはワイヤレスドーナツっていって、男女の愛情を増幅させる人体に無害な端末なの。安心して、消化すれば元に戻るから」
杏がニッコリと笑う。
「ね、今度はこの缶ジュース、飲んでみて?」
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公開:21/01/21 14:38
更新:21/01/21 17:27

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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