窓の涙

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窓を打つ雨の音が静寂の訪れた部屋に響いた。
傘、持っていったかな…。つい心配してしまった。
「もういい」彼の最後の言葉が何度も心の窓を打つ。
彼の余韻がまだ部屋に居座っている気がした。
悲しみや怒り、いろんな感情ではち切れそうになった心も
案外終わってみれば弾けること無く萎んだ。
結局最後に残ったのは虚しさだったのだ。
涙でぼやけていた視界が戻ると彼の好きな色だから買った青い置き時計が目につく。
逸らすように窓を見た。
ドラマで雨のシーンは主人公の心情を表すとか得意げに言ってたっけ。
どうでも良いそんな事を思い出すのが少し可笑しかった。
私はやっと分かった。
何かが終わったんじゃ無い。
何も始まっていなかったのだ。

雨は主人公の涙を表現してんだぜ…
だとしたら雨に濡れた窓は余りにも多い涙の筋を走らせている。
「ふざけんな。晴れろ」
やっと出た声で部屋の余韻をかき消した。
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公開:21/01/21 14:00

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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