0
3

はて?どこかで会っただろうか?
男は私を見ると「見つけた…!」と言って駆け寄り抱きしめた。
この男は誰だろう?
「ずっと探していたんだ…」と呟く辺り、男は私を知っているようだ。
さて、私はどうしたらいい?
「もう離さない」と男は私を抱きしめる。男の体は徐々に凍りつつあるにも拘らず、拘束は緩めない。
そう言えば、人間の愛で雪女は溶けると聞いた事がある。私はこの男の愛で溶けてしまうのだろうか?いや、私の体に変化はない。
「1年前の吹雪の日…俺の妻と子は雪崩に巻き込まれて死んだ…その時俺はお前を見たんだ。そして今日までずっと復讐するために生きてきた。俺と一緒に死ね、雪女」
男は悴む手で自身に火を点けた。先んじて衣類に油でもしみ込ませていたのだろう。火はあっという間に私達を包む。
愛と憎しみはよく似ている。だからこそ憎悪の炎で私は溶けた。
私は水溜まりから這い出ると、死に逝く男を生暖かく見送った。
恋愛
公開:21/01/19 20:29

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容