意外な結末
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「坂田さん、でしたよね。どう思います?」
坂田と呼ばれた長身の男が、向いの椅子にどかりと座り原稿用紙を覗き込む。
「『ぼやき節ルポライターが行く! うずしおに消えた美女とプードル失踪事件ーー意外な真実とは?』意外ねぇ」
ページをめくる手を止め、男を見据える。
「頭の中では完璧に映像化してて、あとは文字にするだけなんですよ」
男は原稿用紙に何かを書き込み、頭をかしげて消ゴムで消す。そんなことを繰り返していて、一向に文章が進んでいかない。
「あんた、小説家だって?」
「ーーそうらしいです。僕、記憶が曖昧で。本屋で転んで強く頭を打ったって」
「打ち所が悪かったんだな。あんた、死んでるんだよ」
坂田は男の顔色が変わっていくのを見て部屋を出た。
「彼、万引き犯よね。泣き叫んでるけど何を言ったの?」
同じ班の葛城が咎めるように言う。
「なりたい自分を思い出したんじゃないか」
坂田と呼ばれた長身の男が、向いの椅子にどかりと座り原稿用紙を覗き込む。
「『ぼやき節ルポライターが行く! うずしおに消えた美女とプードル失踪事件ーー意外な真実とは?』意外ねぇ」
ページをめくる手を止め、男を見据える。
「頭の中では完璧に映像化してて、あとは文字にするだけなんですよ」
男は原稿用紙に何かを書き込み、頭をかしげて消ゴムで消す。そんなことを繰り返していて、一向に文章が進んでいかない。
「あんた、小説家だって?」
「ーーそうらしいです。僕、記憶が曖昧で。本屋で転んで強く頭を打ったって」
「打ち所が悪かったんだな。あんた、死んでるんだよ」
坂田は男の顔色が変わっていくのを見て部屋を出た。
「彼、万引き犯よね。泣き叫んでるけど何を言ったの?」
同じ班の葛城が咎めるように言う。
「なりたい自分を思い出したんじゃないか」
ミステリー・推理
公開:21/01/20 00:01
更新:21/01/20 00:25
更新:21/01/20 00:25
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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