アコーディオン男
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深夜。
潰れた薬局の錆びついた看板がカタカタ鳴る。
ほろ酔い気分でゆらゆらと歩く。
街灯がぽつりぽつりと路地に光の輪を落とす。猫が現れては消える。
町内会の掲示板に、色褪せたチラシが半ば破れてひらひらと、手招き。
そうだ、ここを曲がるんだった、と思う。
『家は山の上にあるんです。階段を上ったその先の』
見上げた先の三叉路で男がアコーディオンを持って立っている。
枯れ木のような立ち姿に不似合いな大きな頭。
伸びた前髪で顔は見えない。微笑む口元だけ。
折れそうな細い長い指が、鍵盤に触れる。
私が階段を上り始めると、音が鳴る。
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ。
アコーディオン男の笑みが広がる。
ああ楽しいな。音に合わせて階段を鳴らす。
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ。
男の前を通り越すとそっと囁いてくる。
『残りはひとつ』
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ…
最後のシを踏むと。
どれ、身は、そら、死。
潰れた薬局の錆びついた看板がカタカタ鳴る。
ほろ酔い気分でゆらゆらと歩く。
街灯がぽつりぽつりと路地に光の輪を落とす。猫が現れては消える。
町内会の掲示板に、色褪せたチラシが半ば破れてひらひらと、手招き。
そうだ、ここを曲がるんだった、と思う。
『家は山の上にあるんです。階段を上ったその先の』
見上げた先の三叉路で男がアコーディオンを持って立っている。
枯れ木のような立ち姿に不似合いな大きな頭。
伸びた前髪で顔は見えない。微笑む口元だけ。
折れそうな細い長い指が、鍵盤に触れる。
私が階段を上り始めると、音が鳴る。
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ。
アコーディオン男の笑みが広がる。
ああ楽しいな。音に合わせて階段を鳴らす。
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ。
男の前を通り越すとそっと囁いてくる。
『残りはひとつ』
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ…
最後のシを踏むと。
どれ、身は、そら、死。
ホラー
公開:21/01/18 12:04
ボケ防止にショートショートを作ります
第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。
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