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ユメコは眠かった。
カーテンの隙間から差し込む光は鋭利なナイフのように、毎朝彼女の安寧を抉った。
半ば眠ったまま朝食を取り、途切れそうな意識でコーヒーを流し込む。
通勤電車の中ではつり革を握ったまま睡魔に敗れ、到着駅を二つ寝過ごす。
仕事が始まっても眠気が引くことはなく、細かいミスを連発する。
そのようにして半日が過ぎ、半透明の意識でランチタイムを終えると、午後からはまた前半戦の焼き直しが始まるのだった。

夜。ベッドのぬくもりに吸い込まれるようにして彼女は眠りについた。

「ユメコ?」
獣の声が遠くに聞こえる。森の中。眼前には焚き火の跡が、星明かりの下にぼんやりと浮かんでいる。
「悪い夢でも見ていたの? なにか謝ってたみたいだけど」
「覚えてないわ」
バオバブの杖を一振りして、結界を閉じる。
「死んだ世界の森。さっさと抜けたほうが良さそうね」
二人は鞄を背負うと、急ぎ足で歩き始めた。
その他
公開:21/01/18 07:00
更新:21/01/18 00:33

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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