2
3
夜風を浴びたくて、街に出た。
この街はいつだって湿度が高い。全身を束子で擦りたくなる程、湿気が纏わり付いてくる。
ちょろちょろちょろ、と水の流れる心地のいい音が聞こえた。
音の出どころは、どぶ臭い路地裏の両脇にある側溝だった。
そこに人影が見えた。
気になって、少し近付いてみる。
老婆が錆と黴だらけの壁に背中を預け、側溝に釣り糸を垂らしていた。
何も釣れないだろと思いつつ観察をしていると、老婆が竿を持ち上げた。
釣り針には魚が引っかかっていた。虫の脚のような物が何本も生えた奇形魚だった。
魚を釣り上げては右隣の青いバケツに放り込む度、老婆はぼそぼそと何かを呟いていた。
更に近付いて、耳を欹てる。
「……1000円……1350円……1260円……」
そうしてやっと気が付いた。魚屋の彼女が何を売っているのか。
あの刺身は全部……。
ぐぅ。
不覚にも、お腹が鳴った。
この街はいつだって湿度が高い。全身を束子で擦りたくなる程、湿気が纏わり付いてくる。
ちょろちょろちょろ、と水の流れる心地のいい音が聞こえた。
音の出どころは、どぶ臭い路地裏の両脇にある側溝だった。
そこに人影が見えた。
気になって、少し近付いてみる。
老婆が錆と黴だらけの壁に背中を預け、側溝に釣り糸を垂らしていた。
何も釣れないだろと思いつつ観察をしていると、老婆が竿を持ち上げた。
釣り針には魚が引っかかっていた。虫の脚のような物が何本も生えた奇形魚だった。
魚を釣り上げては右隣の青いバケツに放り込む度、老婆はぼそぼそと何かを呟いていた。
更に近付いて、耳を欹てる。
「……1000円……1350円……1260円……」
そうしてやっと気が付いた。魚屋の彼女が何を売っているのか。
あの刺身は全部……。
ぐぅ。
不覚にも、お腹が鳴った。
ホラー
公開:21/01/17 22:57
更新:21/02/22 21:12
更新:21/02/22 21:12
湿度の高い街に住む、救われたい住人の日常。
Twitterでも「湿気の街」について文章を書いたり、写真を上げたりしています。→湿度文学。( https://bit.ly/3bGzTe0 )
ログインするとコメントを投稿できます