魔法の時計屋

　腕時計が壊れたので、街にある時計屋を訪れた。
　それまで一度も入ったことのない店だった。
　店内に入ると、コッチコッチという音がそこら中でしていた。
　見れば、店の壁はもちろん、天井や床にも様々な時計がかけられている。
　柱時計に壁掛け時計、懐中時計、腕時計、珍しものだと水時計なんてものもあった。
「お好きなように見てってくださいな」
　店の奥から声がしたのでそちらを見ると、私と同年代の女の人がレジに腰を掛けていた。
　胸元からペンダント型の時計をぶら下げている。
　私は腕時計を直して欲しいという旨を伝えて、女の人に時計を渡した。
　すると、彼女は時計をトントンと二度、軽く指で叩いてから、直りましたよと言って渡してくれた。
　驚いて時計を見れば、確かにちゃんと動いている。
　私が驚いた顔をすると、女の人はこう言った。
「なぁに、ちょっと魔法を使っただけですよ」