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住宅街の中にある小さな公園のベンチに、私はひとりでスーツ姿のまま座っていた。太陽はとっくに沈みそろそろ外灯が点くかという時刻、子どもたちもとっくに家路につき誰もいなくなったそこで、動物の鳴き声が聞こえた。

木立の間に目を凝らすと、何やら小さな獣がこちらを見ている。そしてふたたびニャーと鳴いた。

「そっか、お前も寂しいのか。帰る家は無いのかい?」

思わず近づいて話しかけたが、まったく逃げる様子もなく、逆に私の足に頭をこすりつけてきたので、反射的に体をなでてみた。

近所の家々には明かりが灯り、ゆうげの香りが漂ってくる。一家団欒など今も残っているのかと思うが、私も寂しかった。会社で上司にガミガミと言われ仕事の途中で飛び出してきたが、家には喧嘩中の妻がおり、顔を合わせたくなかったので戻れなかった。

猫に先導され木立の中に入っていくと、景色が急に一変して、私は知らない場所に立っていた。
ファンタジー
公開:21/01/18 19:50
406 選択肢1:異世界転成 選択肢2:神隠しか隠れ里 選択肢3:怪物に食われるホラー 選択肢4:ベンチで夢オチ

武蔵の国のオオカミ( ここ、ツイッタランド、タイッツー )

武蔵の国の辺境に棲息する“ひとでなし”のオオカミです。

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