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私はスマートフォンの画面を見ていた。だがいま、見られているのは私だった。液晶画面がぷっくりと膨れ、ぎょろりとした瞳が私を凝視している。
私はサイドボタンを押して画面を消し、裏向きにして机の上に置いた。

昼食を買いにコンビニへ行くと、また、あの目が私を見ている。食品陳列棚の奥から、床から、ポテトチップスの原材料表示欄から。

エレベーターのボタンを見るのが嫌で、寒風吹きすさぶコンクリートの階段を七階まで上って部屋に戻る。

「目」は、私がなにかに意識を向けるたび現れた。目が現れる頻度は、日が経つに連れて増して行った。初めは隠し金庫の扉だけだったのが、いまでは少しでも集中すると、何にでも張り付いて私を見返してくる。

レンチンしたカレーライスには目玉が浮いていた。洗面所に行って嘔吐すると、排水溝に嵌っている目がくるくると回った。

私は金庫をじろりと睨んだ。目が見ている。私をあざ笑うように。
ホラー
公開:21/01/16 12:00
更新:21/01/16 10:58

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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