替わり

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「焼肉いきません?」

息詰まった夜、レモンサワー片手に始めたマッチングアプリで出会った3つ上の男からの連絡。大抵の相手は、マッチ早々顔写真を見たがるが、この男だけは開口一番焼肉のお誘いだった。その異色さに私はなぜか惹かれてしまった。

「牛タンの美味しいお店でお願いします。」



案の定、面白い人だった。その後も何度か食事を重ね、互いの家を行き来しながら、少し遠出のデートを重ねた。

あんな出会いから始まったとは思えないほど、居心地のいい存在だった。難点があるとすれば、彼は出張でこの地を訪れ、私はその暇つぶしの相手であるだろうということ。そして私は彼との関係を、叶わぬ恋の代替として夢見ていると言うこと。

利害が一致してるならそれでいい。他の男を想いながら彼に抱かれ、胸が締め付けられるのもかまわない。全て私が望んだこと。望んだことのはずなのに、この胸の痛みは消えてくれない。
公開:21/01/16 01:55

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