忘郷のち帰郷(問)

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俺は、世間から存在を忘れられたような集落で育った。
世間は俺たちの集落の存在を無視し、何の公共サービスも受けさせてもらえなかった。

「こんな世間を変えてやる。そして、必ず故郷に錦を飾ってみせる」

そう思い、俺はこの国の首都に出た。だが、学も何もない俺ができたのは、裏稼業だけだった。
故郷の事は、一旦、頭から消した。がむしゃらに、上を目指した。全ては、生き残るためだ。

俺は、運良くこの裏の世界で生き延びて、のしあがる事ができた。

そして、30年後……ついに俺は、政界も牛耳る事ができる程のマフィアのボスになった。

ふと、故郷の事が思い出された。

「そうだ。ようやく、故郷に錦を飾れる」

そう思った俺は、ある日、「今日一日留守にする。探すな」という書き置きを残し……お忍びでマフィアの事務所を抜け出して、一人で故郷へ帰ってみた。



……数日後。
山奥のダムから、水死体が発見された。
ミステリー・推理
公開:21/01/17 15:06

灰田兵庫

気まぐれで始めた事です。
気まぐれで終わって、多分それっきりになると思います。

……さて、いつまで続くか。

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