ハンドクリーム

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「だから、この皿は違うって言っただろ!」
バイト先の厨房で、先輩に酷く怒られる。これでもう何度目だろうか。気を付けてはいるのだが、ふとした瞬間にミスをしてしまう。
「ったく!もういい、今日は洗い物終わらせたら帰れ!わかったな!」
「はい…」
しょんぼりしながら洗い物を始める。数分後
「っ、い…!」
指先に鋭い痛みが走る。見てみると、指が赤切れていた。
(帰りに薬局寄ろ…)



「じゃあお先に…」
「おい」
突然の呼び掛けに肩がビクリと震えた。振り向くと、さっきまで私を怒鳴っていた先輩が難しい顔をして立っている。
「な、何でしょう」
「これやる」
「え」
ぽい、と投げ掛けられたのは、使い掛けのハンドクリーム。
「使い掛けで悪いが、それかなり良い奴だからな。気に入ったら自分で買え」
そのままさっさと戻って行く。

柑橘の甘酸っぱい香りがしたのは、きっと、ハンドクリームのせいだけじゃないよね?
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公開:21/01/17 11:56

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