湿度の高い街。

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纏わり付く湿気、曇り空、泥濘んだ地面。
街を覆う、圧倒的な憂鬱。
どこを見ても、街を歩く人々は俯いている。
肩と肩がぶつかり合っても、誰も何も言わない。
ある日、街を湿気が支配した。
何の比喩でもなく、都内でこの街だけ、年中湿度が高いのだ。
それだけではない。
晴れることがなくなり、雨が降ることもなくなった。
街の上空からは、分厚い灰色の雲がずっと僕達を見下ろしている。
オカルト界隈では様々な説が唱えられているが、未だに原因は不明のままだ。
人々は陰鬱に満ちたこの街を、こう呼ぶようになった。
湿度の高い街、「湿気の街」。

どぶの臭いが鼻を掠めた。
足を止め、路地裏に目をやる。
両側の薄汚れた壁には、いくつもの長く太い配管が蛇のように畝り、今にも蠢き出しそうだった。
あぁ、見なければよかった。
配管や店の看板には、びっしりと首吊り用の縄がぶら下がっていた。
ホラー
公開:21/01/16 23:33
更新:21/02/22 21:13

湿度文学。( 湿気の街 )

湿度の高い街に住む、救われたい住人の日常。

Twitterでも「湿気の街」について文章を書いたり、写真を上げたりしています。→湿度文学。( https://bit.ly/3bGzTe0

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