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「人を一人殺したくらいじゃ、この国では死刑にならない」
中学時代、連れの誘いに乗ってオヤジ狩りをした。暇つぶしのつもりが、男は本当に死んでしまった。
僕たちは少年院に送られた。二年間の収容を経て出所し、以来二人とは袂を分かった。

「金はない、ローンを組んだばかりなんだ」
目隠しをされ、両手を麻縄で縛られている。冷たいコンクリートの床。鉄橋を渡っていく機関車の音が遠くに聴こえる。
「いや、返済期限だよ」
聞き覚えのない声。だが確実に自分と因縁を持つという意思のようなものを感じる。
「〇〇? いや、××か?」
前触れ無く信じられないような痛みが口元に走り、皮膚が抉れてぼろぼろと歯が落ちるのがわかった。
僕は涙を流しながらわけも判らず叫んだ。
「たすけて! 家族がいるんだ!」
死んだ男の顔が不意に浮かぶ。

「人を一人殺したくらいじゃ、この国では死刑にならない」
鼻をつくガソリンの匂いがする。
ホラー
公開:21/01/15 07:00
更新:21/01/14 11:06

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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