夜は明日の朝のため

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 四、五、六。悩んだ末、選んだ四が私の手の中にある。その厚みと重さと、ふわりと漂う小麦の香りに思わずうっとりした。
(……ここで止まってる場合じゃない)
 時刻は日付変更線を超える直前、明日のためにも早く寝ないと。そう思って意識を現実に戻し、四の向こうに見える液体へ目を向けた。やわらかな白とお日様のような黄色を混ぜ合わせた液体には黒い粒が点々と浮かんでいて、これがまた四を引き立たせるのだと思うと胸が踊った。
 ドキドキと鳴り始めた心臓の音を聞きながら私はそっと、四をそこへ置いた。

 ひた、ひたり。

 少しずつ、四が黄金色に染っていく。片面が染まったら今度は裏を向けて、全体を黄金色で染め上げる。
 ここまで来たらあとは明日のお楽しみ。バターを引いて黄金を焼き上げて、仕上げに蜂蜜だってかけちゃうの。

 これは、最高の朝を迎えるための今日の夜。
 四も、私も。おやすみなさい、また明日。
その他
公開:21/01/15 20:42
更新:21/01/15 20:43
食べ物

めそぽたみあ

初心者です、よろしくおねがいします。

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