転移装置

大和博士は長年、転移装置の研究をしている。研究は失敗続きであったが、山口さんという資産家が、最初の実験で自分を転移させるという条件で、研究の資金援助をしてくれている。
そんな博士だったが、今度こそ転移装置の開発に成功した。そこで博士は、条件通り山口さんを最初の実験に招待した。
博士は今回の転移装置に相当自信があるようで、なんでも、転移する者の現在の座標を到着地の座標に書き換えることで転移するらしい。
そこで、山口さんは自宅のある東京を到着地に選び、転移実験を開始した。
博士がスイッチを押すと転移装置は起動し、装置がピカッと光る。しかし山口さんはその場におり、東京に飛ばされてはいない。
「失敗ですね」そう山口さんが言うが、博士は理論は完璧なはずだと首を捻っている。結局、この日はこれで解散となった。
それから少しも経たないうちに山口さんは結婚し、埼玉さんになった。やはり実験は失敗だったようだ。