同窓会

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夫の舌が何度を這っただろう、と寸時躊躇われたが、そのあまりにも白く靱やかな肌の誘惑に抗うことなど不可能だった。

息が整わぬ間に、二人はベッドに横たわった。
先まで脳幹から燃えていた情火は、今となってはゆらゆらと陽炎のように揺れている。そこにいるのは、同じクラスの小野さんではなく、知らぬ男の嫁となった女だ。
男は傍らに腰掛け、カバンからライターとタバコを取り出した。カシャッと甲高い金属音と共に炎が揺らめく。酸素が足りないのだろうか、いつもよりも赤い。タバコの先を優しく近付け、ひと息大きく吸い込み、そして吐いた。
快感と背徳に塗れたこの部屋で吸うタバコは最高に美味かった。この火さえあれば、この世の全てのラブストーリーなど簡単に燃え尽くせる気がした。今夜の出来事もろとも、灰にしてしまいたかった。

しかし、薄汚れた部屋で生じた快楽と下らぬ妄念は、その夜、煙のように曖昧に消えていった。
その他
公開:21/01/14 23:00

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