日本語レストラン

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私と同じ三、四十代の男性客が多いこのレストランにはメニュー表がなく、好きな「日本語」を注文すると、大きめのコップに透明のクラッシュされたゼリー、それにストローが刺さった状態で提供される。
「努力」は苦かったが、最後の一口は爽やかさがあった。
「青春」は酸味や甘味などあらゆる味で織り成されており、飲み干すと、もう二度と味わえないようか気がした。
店員が、
「ほんの少しだけ残っていますが、お下げしてよろしいでしょうか」
と声をかけてきたので頷くと、「青春」は私の前から消えた。

「幸福」を注文した時に事件は起こった。奥から店長が出てきて、私に向かってこう言った。
「大変申し訳ありませんが、お出しすることが出来ません。そして、お客様を出入り禁止とさせていただきます」


あれから五年が経った。
新婚の妻と一緒に白飯を食べ、大根と油揚げの味噌汁を飲む。
今日の「幸福」はちょっとだけしょっぱい。
その他
公開:21/01/12 21:30

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