トイレで会いましょう

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くすくすくす。

嫌味な笑いが、教室の隅から聞こえてくる。その矛先は、全て私だ。ただ大人しく席について本を読んでいるだけで、消しゴムのカスや紙くずが飛んで来る。
主犯格の女生徒は有数のお金持ちで、誰も彼女には逆らえない。けれど、こういうのは相手にすればする程収集が付かなくなるので、私は何でもない顔をして席を立った。

「ねぇ、何で何も言わないの?」
女子トイレで、そう声を掛けてきたのは幼馴染の女の子。気が弱くて、思ってることを正直に言えない、でも、私の可愛い妹みたいな子。
「気にしてないからだよ」
「でも…」
「早く戻った方が良いよ。見つかったら、貴女まで酷い目に遭う」
何で助けてくれないの、と、思わないわけじゃない。でも、こうして気に掛けてくれる人がいるだけで、何故だか「大丈夫」と思えてしまうのだ。
「貴女が良ければ、またここで話そうよ」

放課後に、誰もいない女子トイレで。
青春
公開:21/01/12 13:01

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