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 その牛は山奥で百年生きた。黒い紋様が消え白銀の毛並みとなり鋭い角も生えた。

 嵐の夜。冒険者の男は山奥に洞窟を見つけ夜を明かそうと奥へ進むと、白銀の牛が湧水を飲んでいるのを見つけた。
「なんと美しい」
 傍に寄っても逃げるようすもなく背中を撫でてやるとヒックヒックと鳴いた。
「おい牛よ、すまんが俺は腹を空かしている。乳を分けてはもらえぬか」
 牛は頭を縦に振ったので男はリュックから器を出し乳を絞ってみると、ミルクではあるが酒の匂いがする。飲むと、この世のものとは思えない美酒であった。
 翌朝。男は牛の首に縄を結え、連れて帰った。

 男は酒屋『酔牛』を開業することにした。あの牛から採った酒を売るためだ。さらに他の酒も取り揃えた。

 開店前夜。店内で物音がして目を覚ました男は戸を開けると酒瓶があちらこちらに散らばっている。その奥で牛頭の大男が酒瓶をラッパ飲みしていた。牛魔王である。
 
ファンタジー
公開:21/01/12 11:37
更新:21/01/12 11:42
牛まつり

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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