臓腑繭(わたまゆ)

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その教室は、飾り物が天井からぶら下がっていた。かなり大きいそれは牛の頭部、首だった。
四方をすっかり覆う布が床まで垂れ下がり、ビロード張りの小部屋のようにしっとりと音響を吸いとる。白からピンクのグラデーションの膜で覆われた室内は蚕繭の内部を思わせた。そして天井から下がる計5個の牛の首。

ガラリと引き戸が開き、ぶかぶかの牛のマスクを被った係の女子生徒が新たな牛の首を携えて教室へ入ってくると徐ろに脚立に登り、留め金具のついた長い針金を空洞になっている牛の頭の内側から刺し通し、その先を天井に固定する。
新しいオブジェから薄赤い滴が粘っこく垂れる。
「水切りが甘かったみたい」
どら猫のように割れた声がマスクの中でこもる。
室内は生乾きの臭いが充満している。

「ここはどこですか」
尋ねるつもりなどなかった。他に言葉の通じる者が居るのを知ると急に心細くなったのだが、話しかけてみて不安は更に募った。
ホラー
公開:21/01/12 00:56
牛まつり

晴れ時々雨

普段Twitterにて140字小説を中心に書いています。ジャンルはないです。

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