牛柄の背中

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 毛布のなか、すやすやと眠っているのは、チワワのひかり。私が保育園の頃に生まれた彼女は、もう十三才。すっかりおばあちゃんになり、寝ていることが多くなった。

 
 「ねぇ、ひかり、待っててね」
 海外へ修学旅行に行く前日、私は彼女に言った。私の言葉に、彼女は目を細めた。




 もう、彼女との時間が残されていないことはわかっていた。




 旅先で、ずっと彼女を想った。
 ふわふわのしっぽ。うるうるの瞳。
 トレードマークの牛柄の背中…。


 お散歩をした夕暮れ。
 内緒話をした夜。


 …思い出は溢れてくるばかり。
 
 「はやく、会いたいよ」





 
 「ひかり、ただいま!」
 牛柄の背中を抱き締める。
 







 次の日の夜。
 牛柄の背中は空へと旅立った。

 「待っててくれて、ありがとう」
その他
公開:21/01/11 23:59
更新:21/01/12 00:01
牛まつり 実話です

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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