ギューホの白い牛

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遊牧民の少年ギューホは足が遅かった。
「牛ギュー!」
馬鹿にもされた。
ある日、少年は白い子牛を拾い、カウと名づけ大切に育てた。乳が出始めると少年は毎朝、その牛乳を飲んだ。
数年後、骨太に育った青年は王様主催の持久走大会に参加することに。カウの牛乳を飲み挑むと見事に優勝した。
だが、王様は牛の糞でも見るように「ふん」と吐き捨て、珍しいカウを青年から奪った。
カウはウシシと逃げ出すも、王様の追っ手の火矢に狙われる。ここでBBQになってたまるか。純白の乳と真紅の血を流し、粘り強く歩を進め、主の家へ帰還したカウ。青年の腕に抱かれると、モォー鳴くことはなかった。
泣くばかりの青年はその晩、カウの夢を見た。
「靴を作るモォー」
翌朝、青年は亡骸の牛革を使い、白い靴を作った。カウの背中に乗ったような履き心地の走りやすい靴。
その靴は時が経った今でも『ウシックス』と呼ばれ、多くのランナーに愛されている。
ファンタジー
公開:21/01/11 23:03
牛まつり

そるとばたあ( 神奈川 )

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