ギュータン

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「もっと速く!」
よそ見をしている間に、愛する人を悪党に連れ去られてしまった。私は街の道具屋で魔法の絨毯を購入し、悪党の根城に向けて飛び出した! しかし...

「お、遅い!」
白黒模様の、その絨毯の飛行速度はとてつもなく遅かった。屋根の高さまで上昇するのに小一時間、一つ隣の屋根に移るのに三十分。まさしく牛歩。よく見ると、タグには『魔法の絨毯』ではなく『魔法の牛毯』と書かれている。

旅を続けて一年が過ぎた頃だ。いつものように川辺で水をあげていると。

「モオオ!」

突然、ギュータンが大声で泣き出した。痛みで暴れるギュータンの縁から、小さな牛毯が見え隠れしている。

「お前、いつのまに!」

早く助けないと。その一心で、赤子の切れ端を掴み、力の限り引っ張った!

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命の誕生。最も尊いその瞬間を目の当たりにした私は涙した。そうか。ここが旅の終点なのだ。

「ここから命を育もう」
その他
公開:21/01/11 22:33

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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