赤のアレーナ

賑やかな人声が聞こえ、瞼が開いた。
円形の屋内空間。高い天井。広間には無数のラウンドテーブルが配され、白い卓布の上には薔薇の生花と赤ワイン。
綺羅びやかな衣装を纏った紳士たちがあちこちで談笑している。ざっと見渡してみるが、レディの姿はない。床には緋色のカーペットが敷かれ、壁際では紅のカーテンがドレープを作っている。赤、赤、赤。真紅のホール。
僕はひとり、隅のソファに寝転がっていた。

体を起こし姿勢を正すと、年配の男がひとり、僕の元へとやってきた。
記憶より先に名と、哀しみを残した感情が湧いてきた。
「ガルシアさん」
「お前はまだ早い。ロベルト」
そう言い、僕のエストックとカポーテを手渡してくれた。
最後の瞬間が蘇ってくる。瞼を閉じた。
僕は……マタドール。

Mooooooo！！！

悲鳴と歓声。砂地の先に猛る、我が宿命。

血を滴らせながら僕は立ち上がり、もう一度カポーテを翻した。