2
8
門を出る前に振り返ると、外灯にぼんやりと照らされた薄暗い食肉処理場の姿が見える。私はため息を付いた。
悪質な差別ハガキにはとっくに慣れていたが、いったいどこで調べたのか、私の個人名宛に殺害予告メールが届いたのだ。
楽しい仕事じゃない。だが覚悟と、誇りと、信念を持って続けてきた。牛魂碑の前に、感謝の祈りを捧げながら。でも、もう無理なようだ。
駐車場へ向かう途中の道。嫌な感じがして後ろを見ると、外灯の明かりの向こうに怪しげな男が屹立していた。
「牛殺しめ」
手にナイフ。
無我夢中で逃げていると、突如目の前に黒い穴が現れた。ぎりぎり飛び越え転げながら必死で後方を見やると、すでに男の姿はない。落ちたのか。マンホールの穴のようだ。
長い影が伸びてくる。見上げると巨大なホルスタインの雄牛。頭には黒い王冠を載せている。
私は息を呑み、彼の姿をじっと見た。
目が合うと、牛はふっ、と姿を消した。
悪質な差別ハガキにはとっくに慣れていたが、いったいどこで調べたのか、私の個人名宛に殺害予告メールが届いたのだ。
楽しい仕事じゃない。だが覚悟と、誇りと、信念を持って続けてきた。牛魂碑の前に、感謝の祈りを捧げながら。でも、もう無理なようだ。
駐車場へ向かう途中の道。嫌な感じがして後ろを見ると、外灯の明かりの向こうに怪しげな男が屹立していた。
「牛殺しめ」
手にナイフ。
無我夢中で逃げていると、突如目の前に黒い穴が現れた。ぎりぎり飛び越え転げながら必死で後方を見やると、すでに男の姿はない。落ちたのか。マンホールの穴のようだ。
長い影が伸びてくる。見上げると巨大なホルスタインの雄牛。頭には黒い王冠を載せている。
私は息を呑み、彼の姿をじっと見た。
目が合うと、牛はふっ、と姿を消した。
ミステリー・推理
公開:21/01/10 23:00
更新:21/01/11 13:15
更新:21/01/11 13:15
#牛まつり
さまようアラフォー主夫
ログインするとコメントを投稿できます