食肉処理場

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門を出る前に振り返ると、外灯にぼんやりと照らされた薄暗い食肉処理場の姿が見える。私はため息を付いた。

悪質な差別ハガキにはとっくに慣れていたが、いったいどこで調べたのか、私の個人名宛に殺害予告メールが届いたのだ。

楽しい仕事じゃない。だが覚悟と、誇りと、信念を持って続けてきた。牛魂碑の前に、感謝の祈りを捧げながら。でも、もう無理なようだ。

駐車場へ向かう途中の道。嫌な感じがして後ろを見ると、外灯の明かりの向こうに怪しげな男が屹立していた。
「牛殺しめ」
手にナイフ。

無我夢中で逃げていると、突如目の前に黒い穴が現れた。ぎりぎり飛び越え転げながら必死で後方を見やると、すでに男の姿はない。落ちたのか。マンホールの穴のようだ。

長い影が伸びてくる。見上げると巨大なホルスタインの雄牛。頭には黒い王冠を載せている。

私は息を呑み、彼の姿をじっと見た。
目が合うと、牛はふっ、と姿を消した。
ミステリー・推理
公開:21/01/10 23:00
更新:21/01/11 13:15
#牛まつり

レオニード貴海( ほぼ東京 )

小説書きたい症候群に罹患したアラサーITエンジニア兼、二児のダディ。作家志望の人、活字好きな人とゆるーく繋がりたいようなこの頃。

毎日一作目標で書いてます。

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